汚い部屋にいるとくさくさしてしまって、結局寝て食べてネットを流し見して終わってしまう。豊かな生活は美しい空間から。ほんとうだ。この部屋を何とかしない限りは私はブンカテキニンゲンにはなれそうにない。ちゃんと人に言える趣味を作って資格の勉強もして料理のレパートリーを増やして、って、実績を作らないと。そう思っているそばからゴミ部屋にのまれそうだし、私は昔から片付けられないこどもだったし、書き連ねただけになりそう。でも残業を終えてこの部屋に戻ると死にたくなるのでなんとかせねばならないことは事実。平日に掃除する時間なんてないから、この週末にはじめるべきだったねって、これは何回目の後悔だろう?

頭の中のもやもやを言葉にするとなんて陳腐に響くんだろう。笑っちゃうよね。よくずっと話を聞いてくれてたよね。

だめだな。ある領域においては完全に経験が足りていない。叶わないし敵わない。空白の過去を見透かされているから救いようがない。取り立てて誇るようなことでも逆に惨めがるようなことでもないのだろうけど、虚勢を張ってしまいたくなる。お見通しなんだろうけどね。私の極端なところとか話し方の癖とかへたくそな身繕いなんかで。自分の年齢に追い付かない。

誰か私のことを好きになってくれって思いながら鏡を見たら今日も変わらずブスでした。

 

インスタントな幸福感を味わうには外側からの視線など気にする必要はなくて、でも私がほんとうに欲しいのは好きな人たちからの評価で、それは実際にはとても手が届きそうになくて、現実とのギャップを感じてしまってぴしゃりと水をかけられたような気持ちになる。失敗。

いつまでこんなことを続けるんだろうな。もういい大人なのに。

12月27日、東京

東京に来た。夏に野球観戦来た、あの時以来。当初の計画では、二ヶ月に一回は上京するつもりだったのだ。しかし、労働というものは、予想以上に疲労が溜まる。土日、2日きりのお休みじゃ、電車で2時間の距離はなかなか足が進まなかった。

25日に有休、26日から年末年始休暇。はじめの2日を大掃除にあて、27日28日で東京散策、夜行バスで帰省するつもりだった。初めからつまづいた。私のアパートは、滞在5か月で腐海と化していた。整理整頓の能力がないのだろう。かろうじてゴミ袋に入れられる有機物と、部屋に転がる無機物。私が通る場所はけもの道ができた。仕事を終えてそんな部屋に戻ったところで、気持ちは休まらない。来年こそはリラックスできる場所にしたいと休暇の予定を立てたが、腐海は人の気力というものを根こそぎ奪っていく。雑多にまみれた部屋を横目にパソコンから離れられない。27日の朝、ようやくスイッチが入った。必要な無機物と不必要な無機物の仕分けを行い、大急ぎで荷造り。よれちゃうんだろうなあと思いつつ、マニキュアを塗る。不動産からもらったマニュアルを見つつ水抜きをおこなおうとしたが、個々の物件に対応していなかったのでさっぱり理解できず、諦める。寒さにくじけ、タクシーを呼ぶ。迎車料金がかからないってありがたい。駅でふと見ると、右手の人差し指と中指の爪先が豪華に剥げていた。予想していたとはいえ、がっかりする。

電車に乗ったのは6時を過ぎていた。東京行きの電車は、開閉ボタンがあるのに乗客が押してもうんともすんともしないのがいやだな。特にこんなに寒いと、数分とはいえ堪える。そんなことを何回も繰り返していると、窓の外のネオンがどんどん明るくなっていく。気がつくと都内で、気がつくと上野。乗り換えて神田で降りて、ホテルへ。

はしゃぐ学生の集団も、街中で鬼ごっこをする酔っ払いカップルも、羨ましくて仕方がなかった。私、東京で生活したかったんだなあって思い出した。普段は忙しくてそれどころじゃなかったから。そんなことを考えていたら、ようやく見つけた居場所がなくなってしまう気がしたから。いますぐに東京で生活できなくても、遊びに来ることはできる。一年前よりもっと気軽に。私は物事を難しく考えすぎるのだ。それで高尚な結論を出せるわけでもない。気軽に遊びに来ればいい。東京の街を歩き倒せばいい。私が手に入れられないものを気軽に手に入れる人々、のことなんて考えても無意味だ。嫉妬なんて何にも昇華できない。

そろそろホテルに帰ろう。日付が変わる前にベットに入って、明日は目一杯東京を満喫しよう。



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(明らかに一人飲みに適さないメニューを選んでしまった)