これからは後始末

 夢や目標を持って、私はそこで終わりにしてしまう。具体的な方法は考えない。夢は夢で、たまに思い出して幸せな気持ちになるための空想のネタの一つだった。夢を現実にするなんて考えたこともなかった。

 カイシャの人たちと小さいころの夢について話した。私の夢は小説家になることだった。理由は、外に出て多くの人と交わっていくなんて想像もつかなかったから、家の中できる仕事が良かった。それだけ。小説なんて書こうともしなかったし、想像力だって人並み以下のものしか持ち合わせていなかった。でも私は長いことその実現不可能な夢を自分の未来だと思い続けていた。自分が小説家になれないと気付いたのは、学校に制服を着て通うようになってずいぶん経った頃。地に足をつけた将来設計をしている同級生たちの話を聞いて、冷や水をぶっかけられた気持ちになった。なんて長い間白昼夢に閉じこもっていたんだろう。私は、夢みたいな夢を、大学を卒業したらカイシャインになろうという、ぼんやりとした目標にこっそりとすり替えた。

 なんとかカイシャインになった。ぼんやりとした夢は現実になり、そこでは課題解決のための道筋が求められる。私には見えない。足りない物が多すぎる。職務スキルとか、そんなのはまだ求められちゃいない。私には確かに足りない物がある。誰かと向かい合うたびにそれをひしひしと感じる。一朝一夕では身につかないもの。何より先に消えたいと思ってしまう私にはもしかしたら一生手に入らないかもしれない。私はそろそろ現実を現実として受け止める覚悟を持たなければ。