離脱したい

 インフルエンザの予防接種をした左の二の腕が腫れていたけれど、だんだん痛みが引いてきた。これでこの冬の対策は万全だ。卒論に集中できるはず。自分が作業に取り掛かりさえすれば、ね。

 講義と講義の合間に大学図書館で惰眠を貪っていたら、夢を見た。冬の図書館はあたたかで居心地がよく、窓の外にきりきりするような冷気が広がっていることなど忘れてしまいそうだった。夢は二本立てで、どちらも悲しい気持ちになったことは覚えている。一本目はすでに忘却の彼方であるが、二本目はうっすらと思い出せる。どうしたらこんなストーリー展開になるのかと呆れてそうになったが、夢とは往々にしてそういうものだ。しかし夢には潜在意識がかなり影響を受けているらしいので、私は私に呆れているのかもしれない。思えば私の被害者意識がそのまんま形になったような夢で、いやだいやだと思いつつも私はこの思考をやめることはできない。夢でも逃げられない。自分からは逃げられない、絶対に。面倒な自我と手を結んでしまったな。起きぬけに図書館中の人にこの夢の内容が知れ渡っていたらどうしようと馬鹿げた考えが浮かび、こっそりとあたりを見回す。当たり前だけど脳内が他人に漏れることはなく、図書館にまできて他人に興味を示す人はおらず、机の上の図書やなにがしに向かっている人ばかりだった。取り残されたような気がした。気がつけば師走で、卒業論文の締め切りはじりじりと近づいてきている。しかし取り組んでさえいれば焦らなくてもいい時期である。私は相変わらず腑抜けで、余計なことばかり考えたり小説を読んだりなぜか家族の年賀状係り(父のデスクトップPCが壊れてデータがおじゃんになったので住所録を一から作成する必要がある)になっていたりしている状況だ。真綿で自分の首を絞めて、息の根が止まるのを待っているのかもしれない。